魔術師 | Luminareo

魔術師

2014-07-19

魔術師

「魔術師」タロット図解(1922年版)

インプレッション

意気高く世界創生の魔術に取り組む、美しきうら若き魔術師。
されどその術の結末は茫洋として不可知なる。

ポジティブ

幸先の良いスタート
意気込みは素晴らしい
始めてみる価値はある
始めてみて分かることがある

ネガティブ

成功する保証は皆無
竜頭蛇尾・尻すぼまり
初心忘るべからず

オリジナルで絵を描くなら……

祭壇に陣を張り、無窮を仰ぎ術を始める新米の魔術師。
白い衣・白いユリは志の純粋さ、赤い上衣・赤いバラは術への情熱を表す。
魔法陣はこの世界を、陣の中にある道具は四大元素を象徴する。
彼は四大を使いこなし、己が星を世界に顕現できるのか。目当ての星は未だ影も形もない。

魔術師 ― 何かを目指すヒヨっ子

「魔術師」のカードは「始まり」を意味すると言われます。
その解釈には瀬野も全く同意です。

「始まり」というと、場合によっては「愚者」とかぶる部分があるかもです。
でも、瀬野の感じでは、「魔術師」が出るときっていうのは、やろうとしてることについて、いろいろ考えてることアイデアがある訳だけど、そのアイデアや考えを含めてGOサインだよ、って感じです。

「愚者」が出るときってのは、「そんなん考えてないでやっちまえ!」って感じですね(あるいは、考えなしの行動をしようとしてるときとか)。


しかしですね。
何かを始めるときに「魔術師」のカードが出ることは、確かによくあるし、その時は、自分の意気込みも、とても健全なことが多かったですが(そういや「愚者」が出るときの意気込みは、意気込みじゃなくてむしろ要らん心配だったことが多いな)、だからと言って、始めに「魔術師」が出たら、結果もいつもよいのかというと、……割と、五分五分かな?というのが、瀬野の体感です。

意気込みだけは良し

「魔術師」が出るとき、実は、この先の成果とか実績とか見通しとか結果とか気持ちよく皆無なんですね。
先のことは全く「何もない」んです。
ただ、始まるということだけしかない。

もちろん、始めることについては超絶OKです。
だけど結果について、よい見通しも保証も、まるで何もないのが「魔術師」なんです。

「『魔術師』が出た! これは幸先がいい! この先きっとうまく行く!」
……って思っちゃう気持ちはよく分かるよ! だがしかし落ち着け。落ち着くんだ。
この先うまく行きそうってときは、「魔術師」じゃなくて、むしろ「星」が出ますわ。

あくまで「今からやる! その意気込みや良し!」という意味しかないんだ。
「いいスタート」っていうことだけなんだ、「魔術師」は。


だから、「魔術師」のカードに描かれる魔術師について、

今まで幾多の魔術を成功させてきた魔術師が、今また新たな魔術を始めようとしている

みたいな解説を見かけるんですが、瀬野は、この「魔術師」、実は、ヒヨっ子魔術師初めて魔術をするところなんじゃないか、と思うんです。

これから魔術を始めるけれど、その魔術が成功するか、失敗するか、そんなことは分からない。
そして魔術師には、自分の魔術に関する経験もノウハウも、まだなんもない。
それでも、夢と期待を胸に抱き、「魔術師」は魔術を始めるのだ。

……っていう風に捉える方が「始まり」って感じがするよ!

ウロボロスをベルト代りにしてたり、頭に無限大マークが乗っかってたりしてさぞかし出来る魔術師みたいに見えるけど、こいつはきっと形から入るタイプなんだよ。
頭の無限大マークは……広がる期待と夢だけは間違いなく無限大だね!

「魔術師」の目指す先には

ここから先はだいぶ蛇足だけど、何かを始めるのに、いくらでも美しい夢と熱い期待を持って構わないけど、いくらそんな意気込みを持ったところで、それが必ず最後に実を結ぶかというとそうとも限らない気がします。
むしろ、初めに抱いた夢や期待美しく輝かしいほど、道半ばで心折れることが多いんじゃないんでしょうか。
それより、なんの期待も持たず、それをやるのがごく当然と思うぐらいの全然大したことじゃないことの方が完遂しやすかったりして。


始めたことを最後まで完遂できるかどうかは自分が「それでも」それをやりたいかどうかにかかってるんじゃないかな、と瀬野は思う訳です。

や、何かを始めるときは、もちろん誰だって表向きは「それをしたい」と思ったからそれを始める訳ですが、本当は、それを始めたのは、それをすることそのものが目的じゃなくて、それをやれば他人たちが褒めたり羨んだりしてくれるのが気持ちいい、などの「やってることとは全く違う目的」が、実はあるかもしれません。

そうなると、挫折せずに成し遂げられたとしても、成し遂げたとき得る満足より、成し遂げるまで我慢してきた辛さの方が大きかったりする訳で。……RWS版の「ペンタクルの7」のようにね。


……そうは言っても、自分が本当は何をしたいのかってことはビックリするほど自分でもわかっちゃいないものでもあります。
だから、始めたいことはなんだって始めるしかない、とも瀬野は思います。

始めなければ、結果にたどり着くことがあり得ないのはもちろんですが、ひどいことに、自分が本当にそれをしたかったのかどうかということを知ることすらできません。

魔術を始めた「魔術師」が、本当は何を目指しているのか、そして、その本当に目指すところに、「魔術師」は無事たどり着けるのか。
とにかく、始めたばかりの今の時点では、それは全く分からんのです。