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アストロラーベ解説

アストロラーベ解説

「アストロラーベ」とは、古典時代〜ルネサンス期のヨーロッパや、中世のイスラム世界で広く使われた天文観測器具です。

見てもらえりゃ分かりますが、「透かし彫の唐草で表現された星図が円盤の上で回転する」という、厨二病を猛烈な勢いで悪化させるアイテムです。
それだけでも厨二病に悪いのに、さらに「色々な使い方のあった(が、まとまった情報が伝わってなくてよくわからない)アナログ・コンピュータ」だなんて言われりゃもう大変。

だって、使い方の失われたアナログ・コンピュータですよ? 心踊りません?
あなたの心が踊らなくても瀬野の心はぴょんぴょんします。
と言うわけでこの使い道のわからないアナログ・コンピュータ、使ってみようじゃありませんか。みんなで!


このアストロラーベ、とにかく初期の天文学のマストアイテムで、用途はえらい幅広く、

  • 太陽・月・惑星・恒星といった天体の軌道傾斜角の測定
  • 惑星の位置の予測
  • ホロスコープの作成
  • ある土地の緯度経度の測量
  • ある土地での現地時間の算出
  • キブラ(メッカのカアバ神殿の方角)の算出
  • サラート(イスラム教の礼拝)の時間の算出
  • 測量や三角測量

といった用途に使われました。

四分儀に組み込まれ、四分円の扇形をした「アストロラーベ四分儀」というものも生み出されました。
アストロラーベ四分儀がいつどこで生み出されたのか正確には不明ですが、12世紀頃のエジプトや14世紀頃のシリアで書かれた論文が見つかっており、アストロラーベの代用品として一般的に普及していました。

また、天文観測だけでなく航海でも使われており、18世紀に六分儀が発明されるまでは航海術でも主要な測定機器でした。
ただ、アストロラーベは地上や凪いだ海上での緯度経度の測定はできたのですが、荒れた海上での使用には難があったため、その問題点を解消した「航海用アストロラーベ」が生み出されることとなります。
今日ではアストロラーベと航海用アストロラーベは混同されて説明されることが多いようですが、割と別のものです。

資料いろいろ

アストロラーベの構造と部品

メーター (Mater)

アストロラーベの土台です。

表面: 縁に 24 時間の時刻目盛りと 360 度の角度目盛りがついていて、その内側はティンパン(後述)をはめ込めるようになっています。小さいレプリカ品などではメーターとティンパンが一体となったものもあります。

裏面: 外周には 360 度の角度目盛り、黄道十二宮のついた黄経目盛り、年間の日付の目盛りがついています。日付の目盛りで調べたい日を探し、そこから黄経目盛りを読むことで、その日の太陽の黄経(黄道上の太陽の位置)を割り出します。中央部分には、太陽高度から時刻を導く曲線や、三角関数計算用のグリッドが描かれることが多いですが、特に何も描かれない場合もあります。

スローン (throne)

メーターの上部に突き出ているアストロラーベの取っ手で、吊り下げるためのひもを取り付けられるようになっています。
高度を測定する時はアストロラーベはひもに吊り下げて使います。

ティンパンまたはプレート (Tympan or Plate)

都市ごとの緯度を基に算出した地平線および高度方位の座表線が彫り込まれた円盤で、メーターの表面にはめ込んで使用します。
通常ではティンパンは複数枚がセットとなっており、その土地の緯度に対応するものを適宜入れ替えて使います。

リート (Rete)

メーターにティンパンをはめ込んだ上に乗せる、透かし彫りの施された円盤で、明るい恒星の位置と黄道を示します。
透かし彫りの突起の先が恒星の位置で、中心からずれた位置にある目盛りの付いた円が黄道です。現在の星座早見盤の回転盤に比類できますが、アストロラーベでは空が東西反転で表現されている点が星座早見盤とは違います。
施される透かし彫りはごくシンプルなものから装飾性の高い華麗なものまでさまざまです。

ルール (Rule)

リートの上で動く、赤緯の目盛りが付いた針で、特にリート上での太陽の位置を示すときに使います。

アリダード (Alidade)

裏面の針で、両端に立ち上がった部分があり、そこに小さい穴があいています。
この穴は太陽や天体の高度を測定するときに使います。アストロラーベをひもで吊り下げ、アリダートの2つの穴の影が重なって地面に投影されるように針を回すと、そのときのアリダードの傾きが太陽の高度となります。
星などの天体の場合にはアストロラーベを目の高さに吊り、アリダードの穴からその星が見えるところまで針を回すことで高度を測定します。

ポスト、ホース (Post, Horse)

各部品を留めている中央の軸がポストです。
各部品が抜けないようにポストに差し込んで留めるピンにはホースという名称があります。

アストロラーベを使って12月31日の太陽の位置を見る

アストロラーベの使い方は多岐にわたりますが、もっとも基本的な使い方を解説します。

  1. 裏面の円周の内側の日付目盛で、12月31日を探します。
  2. その12月31日の位置にある黄道十二宮の目盛りを読みます。この日の太陽は山羊座の9度あたりにあるということが分かります。
  3. それから表に返し、リートの内側の黄道目盛りで山羊座の9度の位置を探します。リートを全天だとすると、そこがリート上における12月31日の太陽の位置になります。
  4. ルールを動かしてこのリート上の「12月31日の太陽の位置」に固定します。そしたらその状態でルールごとリートを回していきます。
    東の地平線(向かって左側にある)と「12月31日の太陽の位置」がぶつかったところで止めます。
  5. このときのルールの先が指している一番外側の24時間目盛りが、12月31の日の出の時刻となります。
    逆に、西の地平線(向かって右側にある)と「12月31日の太陽の位置」がぶつかった時のルールの先の目盛りは日の入り時刻ということになります。

アストロラーベは、この他にも日付と太陽の高度から現在時刻を割り出す、建物の高度を測定するなど、多様な用途で使われました。一説によれば1000通りの使い方があったとも言われています。

参考文献

このコーナーで参考にしたサイトは以下の通り。