続・ラテン語でGO | Luminareo

続・ラテン語でGO

2014-07-16

続・ラテン語でGO

タロットの札名をラテン語で書くとしたらどうなるんだろうかという、長大な考察です。

「続」というからには当然その前のエントリがある訳でして。
……要はこれ、この記事の追記なんですが、これがあまりにひどいボリュームになったんで、ページを独立させました。

要は、厨二病をこじらせて「よーしパパタロットのカード名はラテン語にしちゃうぞー」……な~んてことを言った結果、かなりひどいことになりました。
だけどパパ瀬野は頑張った。超頑張った。


まあ、今でこそタロットと言えば占いや魔術がらみで使われるもので、なんか神秘的なものって印象があるから、中世のヨーロッパにはラテン語で書かれたタロットだってあったんじゃないかって思いますよね。
とはいうものの、タロットはそもそも「ゲーム用、そして賭博用のカードとして民衆の間に広く流通した」という出自のカードです。
そういう由来を考えるなら、学術書や公式文書用の言語であったラテン語がそんなゲーム用のカードで使われるなど、ほぼありえなかったと考えるほうが自然です。
例えて言うなら、艦これとか刀剣乱舞とかのソシャゲー内で表示される文章が、学術論文みたいだったりお役所からの通知の文面みたいだったりするようなもんですね。
そんなソシャゲー見てみたいっちゃ見てみたいけど、企画する側からすりゃ大博打だよね。

つまり、タロットの札名のラテン語を知りたけりゃ、自分で考えて訳すしかないのだ!!

名札の名称候補たち一覧

さて。
タロットのラテン語カード名を考えるにあたって、まずラテン語の名称候補を、大昔のカード名や海外の人たちが上げたものなど含めて全部書き出しました。

ちなみに海外の人たちの討論会場はこちら↓

それぞれの単語の意味も書きますよ。厨二病の皆様の参考になるとうれしいな!

大アルカナの名称候補

まずは大アルカナの名称候補から。ちょっとすごいことになりました。

番号日本語名ラテン語名候補大体の厳密な意味
0愚者Stultus愚者・バカな(男)
Fatuusバカ・愚かな(男)
Scurra伊達男
Insanus気違い
Vagus放浪している(男)
Idiotaバカ・アホ・マヌケ
Baro馬鹿者・のろま・おめでたい人
Varo愚か者・不作法者・能なし
1魔術師Magus魔術師・道士・賢者
Minimus最も小さい(男)
Mimus(パント)マイム役者
Praestigiator奇術師・ペテン師
Caupo宿屋の主人・ペテン師
Ioculator道化師
Hariolus占い師
2女教皇Papissa女教皇
Antistita女司祭長
Sacerdos司祭・神官
Flaminica神官・巫女
Pontifex Maxima最高神官(女)
3女帝Imperatrix女帝
Regina女王
4皇帝Imperator皇帝
Rex
5法王Papa法王・教皇
Pontifex Maximus法王・最高神官(男)
Summus Pontifex大神官・最高神官
Pontifex司祭・高位神官
Antistes司祭長
Sacerdos司祭・神官
6恋人Amor
Amoris(「Amor」の単数・所有格)
Amantes愛してる人たち
Amator恋人・彼氏
Amatores(「Amator」の複数形)
Amatrix恋人・彼女
Cupidus情熱的な・欲情した(男)
7戦車Currus戦車
Carrus荷車
Quadriga四頭立て馬車
Biga二頭立て馬車
Triumphus凱旋式
Currus Triumphalis凱旋車
Vehiculum Triumphi凱旋式の乗り物
Victoria勝利
8Fortitudo強さ・忍耐・勇敢さ
Propugnaculum要塞・防壁・防御
Vis物理的な力・エネルギー
Vires(「Vis」の複数形)
Robur硬さ・強さ・根拠地
Fortis強い・勇敢な(男)
9隠者Senex老人・年老いた(男)
Eremita隠者
(Homo) Solitarius孤独な(男)
Sapiens智者・賢い(男)
Monachus修道士
10運命の輪Rota Fortunae運命の輪
Fortuna幸運・運命
Rota輪・車輪
11正義Iustitia正義・公平・平等
Iustus正しい(男)
Ius正義・法・義務
12吊るされた男(Homo) Suspensus吊り下げられた(男)
Patibulum十字架の横木・絞首台
Laqueo Suspensus首つり縄で吊られた(男)
Pendulusぶら下がっている(男)
Pensilisぶら下がっている(男)
Pendensぶら下がっている(男)
Traditor裏切り者
Proditor裏切り者
Crux十字架・極悪人
Pendens Proditorぶら下がっている裏切り者
Pendeo Capite Deorsum私は頭を下にしてぶら下がる
13死神Mors死・死神
Nex凶死・殺人
14節制Temperantia節制
15悪魔Diabolus悪魔・魔王
Daemon鬼神・精霊
16Turris
Ignis
Turris Fulgurata雷に打たれた塔
Fulmen
Ignis Caeli天の火
Domus Dei神の家・神の館
17Stella
Astrum
18Luna
19太陽Sol太陽
Phoebusポエブス(太陽神)
20審判Angelus天使
Iudicium審判・決定
Iudicium Dei神の審判
Sententia意見・考え・判断
Resurrectio復活
Nuntiusみ使い・お告げ
21世界Mundus世界

海外の人たちのご提案で選択肢が広がりんぐで大変検討しがいが多いにありました。

しかし辛かったのは「恋人」「吊るされた男」ですね。
人ごとに提案する単語が違う上に、現在分詞だの過去分詞だのを持ってきやがって文法書を探し当てるのに一苦労でした。しかも向こうの人も動詞活用うろ覚えみたいだし。

それにしても「吊るされた男」は海外の人たちも異様に苦戦しています。
挙句の果てに、札名というより文章を提案しちゃってる人がいるもの。

コートカードの名称候補

コートカードの名称候補も上げてみます。……超迷った。エースとペイジが。

エースAsアス(通貨単位)
Unus1
Unitas単位
Unio一つのもの
Primus最初の
Princeps第一人者
Caput頭、始源
Rex
女王Regina女王
ナイトEques騎士
Caballarius騎士
Filius Regis王子
Regulus王子・皇太子・大公
Princeps王子・プリンス
ペイジPuer少年
Pagius従者・召使い
Viator Pedestris徒歩の旅行者
Minister僕・仕える者
Satelles従者・ガード
Servus召使い・奴隷
Miles兵士
Scutarius盾持ち
Nuntius伝令使
Filia Regis王女
Principissa王女・プリンセス
Domina女主人・淑女
Ancilla侍女
Puella少女

各スートの名称候補

続いて4つのスート名称候補です。例によって複数形・所有格に変化させ済。

ワンドのBaculorum杖・棒・棍棒
Caduceorum伝令使の杖
Virgarum挿し木の枝・スイッチ・杖
カップのCalicumカリス・聖杯
Scyphorumゴブレット・(大型の)杯
Poculorum(飲むための)コップ・杯
剣のGladiorum(一般的な)剣・剣闘士用の剣
Spatharum騎兵用の細身の長剣
ペンタクルのPentaculorumペンタクル
Monetarumお金・硬貨
Nummorumコイン・小銭
Discorumディスク・円盤
Rotarum輪・車輪
Denariorumデナリウス(通貨単位)

辞書と文法書引き引ききっちり和訳したったぜ。すごいよ瀬野超頑張った!

中世のデッキの一例

ちなみに海外の人たちによると、中世のタロットで、ラテン語による名前が全部そろっていたものの一例では、こんな名前になってたそうです。

出典はMémoires et dissertations sur les antiquités nationales et étrangères」276ページの脚注。
しかしこれは今のタロットのカード名にはそのまま対応してないので注意。

切り札名(大アルカナに相当)

番号日本語名中世のタロット
0愚者Stultus
1魔術師Minimus
2女教皇Papissa
3女帝Imperatrix
4皇帝Imperator
5法王Summus Pontifex
6恋人Amor
7戦車Currus
8正義Iustitia
9隠者Senex
10運命の輪Rota Fortunae
11Propugnaculum
12吊るされた男Patibulum
13死神Mors
14節制Temperantia
15悪魔Diabolus
16Ignis
17Stella
18Luna
19太陽Sol
20審判Angelus
21世界Mundus

「魔術師」のカード名が「一番弱いもの」だったり、「隠者」が「老人」だったり、「力」が「防御」だったり、「吊るされた男」が「絞首台」だったり、「塔」が「火」だったり、「審判」が「天使」だったり。

数札コートカードの名称

このデッキのコートカードはこうらしい。

Rex
女王Regina
ナイトEques
ペイジViator Pedestris

エースは強い札ではなく、数札の一番弱い札だったようで、名前はありません。
ペイジは「徒歩の旅行者」。……もっと短くならんのか。

各スートの名称

そしてスートはこうなってるようです。

ワンドのCaduceorum
カップのScyphorum
剣のGladiorum
ペンタクルのMonetarum

ペンタクルっていうか、もろ「お金」でんがな。

自分版ラテン語案

上記のことを踏まえまして、以下のように考えてみました。
勝手に「これが妥当じゃないかな」と思う案と、瀬野はこれで行くことにした案両方を挙げときます。

そりゃもう色々と考えたり調べたりしましたけど、それ全部書くとうんざりするほど長くなるから、決定の過程はいろいろ省略します。
まあ、ノリと勢いとか、単に好みで選んだのもありますが。

なお、瀬野はこれで行くことにした案は現在の暫定版なんで、細かく考察した後で差し替えることがあるかも。

大アルカナ名称・案

まずは、大アルカナどん!

番号日本語名勝手に妥当だと
思うラテン語案
ただし瀬野は
これで行く
0愚者StultusStultus
1魔術師PraestigiatorMagus
Magus
2女教皇PapissaAntistita
Antistita
3女帝ImperatrixImperatrix
4皇帝ImperatorImperator
5法王PapaPontifex
(Summus) Pontifex
6恋人AmorAmantes
Amantes
7戦車CurrusQuadriga
8FortitudoFortitudo
9隠者SenexEremita
Eremita
10運命の輪Rota FortunaeRota Fortunae
11正義IustitiaIustitia
12吊るされた男PendulusSuspensus
Suspensus
13死神MorsMors
14節制TemperantiaTemperantia
15悪魔DiabolusDiabolus
16Domus DeiIgnis Caeli
Turris
17StellaStella
18LunaLuna
19太陽SolSol
20審判AngelusNuntius
Iudicium
21世界MundusMundus

「これが妥当じゃないかな」案で名前を2つ出してる奴ですが、マルセイユ版ぽく行きたいときはで、RWSぽく行きたいときはって感じでお願いします。

それで、「戦車」がですね、本当は「Currusなんですが、クアドリガかわいいよクアドリガ!!
クアドリガといえばベルリンですね。ああ、またベルリンに行きたい。

あと、「塔」、これも本当は「Turris」か「Domus Deiですがいろいろ思うことがあるので、「天の火」という意味のIgnis Caeli」を採用します。
元ネタはパピュスの「ボヘミアンのタロット」です。こらそこラピュタって言わない!

そして、「審判」も、たぶん「Iudicium」が妥当なんですが、自分に告げられた真実によって、本当の自分が目醒める的な感じにしたかった。

コートカード名称・案

コートカードの名称はこんなんなりました。
このあとにスート名が続くため、スペースの都合上長い単語はNGです(泣)。

日本語名勝手に妥当だと
思うラテン語案
ただし瀬野は
これで行く
エースAsCaput
RexRex
女王ReginaRegina
ナイトEquesEques
ペイジPuerPuer
(Puella)
Pagius

……「エース」の語源になったのはAsですが、それって実は通貨の単位なことが猛烈に引っかかった瀬野です。

そこで、瀬野のデッキでは、エースはスートの根源なので、盛大に拡大解釈して、「源」って意味を持つCaput」を採用することにしました。

あとはペイジもむちゃくちゃ迷いましたな。

英語の「ペイジ(Page)」の語源ラテン語の「Pagiusなのですが、その「Pagius」の語源はギリシャ語で「少年」という意味なので、だったら、文字数も出来るだけ少なくしたいこともあり、Puer」に決めました。

各スートの名称・案

4つのスートはこうしました。

日本語名勝手に妥当だと
思うラテン語案
ただし瀬野は
これで行く
ワンドのVirgarumBaculorum
Baculorum
カップのScyphorumCalicum
Calicum
剣のGladiorumGladiorum
ペンタクルのMonetarumPentaculorum

ワンドだけど、RWS版みたいな棒はやっぱり「Baculumだと思うんだ。

そして、ペンタクルはどうしてもペンタクルで行きたかったので、これは変わらず。